現在、携帯大手各社は、無線基地局のバックホールで衛星回線を活用しています。しかし、これは主に光ファイバーが敷設できない地域での基地局運用のため、光回線の代替として補助的に使用されています。
特にKDDIは、2022年から屋久島などの一部地域でau向けにStarlinkを活用しており、2023年9月に重要な発表を行いました。
KDDIからの発表は次の通り:
KDDIは2023年8月30日、Starlinkの最新鋭の衛星とauスマートフォンとの直接通信サービス(以下 本サービス)の提供に向けて、Space Exploration Technologies(スペースエクスプロレーションテクノロジーズ)Corp.(本社:米国カリフォルニア州、CEO:イーロン・マスク、以下 スペースX)と新たに業務提携しました。
スペースXが開発したStarlinkとKDDIのau通信網を活用することで、auスマートフォンが衛星と直接つながり、空が見える状況であれば圏外エリアでも通信をすることが可能になります。これまでどの国内通信事業者でも5Gや4G LTEでは提供が困難だった山間部や島しょ部を含む日本全土にauのエリアを拡張し、「空が見えれば、どこでもつながる」体験を実現していきます。
出典:KDDIプレスリリースより
2024年には、普段使っているauスマホがStarlinkの衛星と直接接続できるようになるという内容です。
この取り組みは、Starlinkと米国の通信大手T-Mobileが先行で行なっている施策ですが、日本ではパートナーシップを結んでいるKDDIが実施します。
T-Mobileは2023年の後半に試験および、サービス提供を目指す予定です。
衛星とスマホが直接接続されると、何が起きるのか?
衛星のエリア内であれば、これまでの圏外エリアであった山中、海上、ルーラルエリアでもスマホが利用可能になります。
これまでの通信では、必ず通信会社の無線基地局を経由する必要がありましたが、近傍に無線基地局が無い場所でも、衛星を経由して通信できるようになります。
これは移動体通信の歴史においても、画期的な出来事と言えます。
例えば、これまで海上では、陸上の無線基地局からの電波を端末(スマホ)が受信する必要があり、沖に出るほど電波が届かず使えなくなりました。
海上で通信をしたい場合は、衛星通信会社と契約をし、専用の通信端末を使用する必要がありました。
まずは軽いテキストメッセージの送受信から運用開始
KDDIによると、2024年中を目途にSMSなどのメッセージ送受信から開始し、音声通話やデータ通信も順次対応予定と発表しています。
記事執筆時点で一般提供されているStarlink(Gen2)は、最大220Mbpsの理論値を持ち、ファーストイーサネットよりも少し高速です。
衛星回線としては、これでも十分高速な通信速度と言えますが、電波の帯域幅が4G LTEや5Gの移動体通信と比べて広くありません。
最初から動画などの大容量通信をどこでも楽しめるというわけにはいきませんが、これまで圏外だった地域でテキストメッセージが送れるようになるだけでも、海上や山中での遭難救助等に役立つことになりそうです。
SoftBankはOneWeb、楽天はAST SpaceMobileと業務提携、Amazonは「Project Kuiper」で衛星通信市場へ
KDDIがStarlinkと提携する一方、ソフトバンクは衛星通信大手のユーテルサットグループ OneWebとの契約を締結、楽天モバイルはアメリカのAST SpaceMobileと業務提携を結びました。
これにより、ソフトバンクと楽天モバイルもKDDIと同様のサービスを展開すると見られています。
また、Amazonは「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」を通じて、2024年に衛星ブロードバンド通信の提供を目指しています。
当初の計画から大幅に遅れながらも、2023年10月にプロトタイプの衛星を軌道上に展開し、地上局との通信試験に成功しています。
2024年、コンシューマー向け衛星通信が本格的に普及し、移動体通信市場にも大きな変化が訪れることが予想されます。
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